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2024/01/14 レース

【レポート】第29回 全日本自転車競技選手権大会 シクロクロス(JCFシクロクロスシリーズ第8戦)

【レポート】第29回 全日本自転車競技選手権大会 シクロクロス(JCFシクロクロスシリーズ第8戦)

 

▼開催日

2024年1月14日(日)

 

▼会場

道の駅うつのみや ろまんちっく村(栃木県宇都宮市新里町丙254)

 

▼出場選手

小坂 光

沢田 時

 

▼競技概要

栃木県宇都宮市・道の駅うつのみや ろまんちっく村内特設コース 0.5㎞+3㎞×9周回 総距離27.5㎞

出走:50名

スタート時間:14:30

 

▼レースレポート

シクロクロスの日本一を決める年に一度の大会、「全日本自転車競技選手権大会 シクロクロス」が、道の駅うつのみや ろまんちっく村で開催された。宇都宮ブリッツェンにとって地元開催となることは言わずもがなで、前回この地で開催された2016年の全日本では、現在はブリッツェンに所属する沢田時が優勝を収めている。竹之内悠選手の6連覇を阻止する全日本優勝であった。今回、宇都宮ブリッツェンからはその沢田と小坂光が参戦。

 

「ブリッツェンのジャージを着て走る最後の全日本。しかも宇都宮という舞台。皆さんにいい走りを見せられるように頑張ります」とレース前に語った小坂は、このシクロクロスシーズン後にヴェロリアン松山への完全移籍が決まっている。

 

コースは、前日夕方からの雪と気温が下がった影響で、芝生の下が凍っている状態。レース当日は穏やかな晴れの天気となったため、「表面だけは溶けてきているので、すごく難しいコンディションになった」と小坂。「滑りやすい路面で、コース上の至るところに危ないポイントがある。かなり難しいコースになっているので、集中していかないと」と試走後の沢田も語る。

 

14時30分のスタート前に、コールアップがおこなわれた。「しっかり合わせてきたので調子はいい」という小坂はゼッケン5番。「緊張してきた」という沢田はゼッケン2番。「全日本選手権を地元チームで迎えられるという、こんな機会はなかなかないので、最後まで雰囲気を楽しんで、全力で、優勝を目指して走りたい」と沢田。

 

スタートの笛が鳴り、勢いよく飛び出したのは竹内遼選手(GHISALLO RACING)。2番手に沢田、そして3番手に小坂。500mのスタートループの間に、それは沢田、小坂のワンツーに変わり、会場は大いに盛り上がる。そのまま進み、このコースの一番の難所、直登の上りからのキャンバーのセクションで順位が変動する。

 

この箇所は小坂が言っていた芝生の下が凍っているコースの1つだ。ラインの取り方としては、担ぎでキャンバーの一番上まで上り、比較的平坦なキャンバー最上部を走るというのがベスト。1、2番手でこのセクションに入った沢田と小坂は、セオリー通りのラインを行けたが、遅れを取っていた織田聖選手(弱虫ペダルサイクリングチーム)は、キャンバーを上り切る前に自転車にまたがり、傾斜の厳しいラインを行く賭けに出る。当然、沢田、小坂よりは早く漕ぎ始めることになるが、リスクも大きい。しかし織田選手はミスをすることなく、沢田と小坂の間に入り2番手に。その直後にシケインが設定されており、レースはこのキャンバーとシケインの走りが、順位の明暗を分けると予想された。織田選手は今季負けなし。全日本2連覇が掛かっており、その勢いはこの1周目から感じさせた。

そして2周目、先頭のパックは3名で沢田、織田選手、竹内選手。少し間を開けたセカンドパックの3名には小坂も。この並びで難所のキャンバーへ。沢田は先頭で担ぎ終え、今度は織田選手も最上部まで担いで上る。そして再び自転車にまたがろうとしたその時、織田選手が一気に先行した。とにかく一気にトップに躍り出た。それには理由があった。沢田のチェーンが落ちたのだ。沢田は完全に止まってしまった。

 

フロントギアにチェーンを掛け直すのに手こずる沢田。小坂のいるセカンドパックにも抜かれ、ようやく走り始めたときは7、8番手ほどだったろうか。20秒以上のロスをしてしまい、もはやここで宇都宮ブリッツェンの全日本は終わりかと思われた。

 

しかし次の周の3周回目。2番手を行く竹内選手のすぐ後ろに、沢田の姿が! 切れ目なく続くファンの声援に後押しされ、驚異的な追い上げで沢田は表彰台争いにカンバックしてきた。そのまま竹内選手をパスし2位に浮上。やはり、地元の声援は選手に力を与える。

 

沢田と竹内選手は、しばらく一進一退を繰り返したが、7周回目には沢田が完全に竹内選手を引き離し単独2位に。小坂はリズムよく踏んで5位をキープして進む。

 

そして最終ラップ。先頭は織田選手、2位沢田、3位竹内選手、4位竹之内選手、5位小坂の順で、織田選手と沢田の差は1分以上開いていた。織田選手は2周目の沢田のトラブル以降、落ち着いてレースを進めた。それだけに、トラブルを心配することはなかった。結局、全日本2連覇でフィニッシュ。

 

1分40秒遅れた沢田は2位。ギャラリーに左手を上げて挨拶をしながら、静かにフィニッシュラインを通過した。小坂は5位。宇都宮ブリッツェンとしての全日本ラストランは、観客にタッチをしながら終えた。

 

今季無敗の織田選手はやはり強く、沢田もそれは認めるところだが、勝負に勝ちを諦めることは絶対ない。来年の全日本選手権も宇都宮で開催されることが発表され、強くリベンジを誓う。

 

最後に、応援に駆けつけてくださった皆様、遠くから思いを寄せてくださった皆様に感謝申し上げたい。沢田の驚異的な追い上げは、皆様の後押しのお陰。残りわずかとなったシクロクロスシーズンも、引き続き応援よろしくお願いいたします。

【小坂 光のレース後コメント】

たくさんの応援の中で、自分の持てる力は出し切ったので、まぁ、いいレースをすることはできたかなとは思う。(宇都宮ブリッツェンのシクロクロスチームを沢田選手に引き継ぐ形になり、メッセージをと聞かれ)僕としては引き継いでくれる人が来てくれたことが嬉しいし、引き継いで切れるのが時だというのも嬉しい。トップの勝てる選手がチームにいるということは大事だと思う。僕も競技は続けるので、ライバルでいられるように頑張り続けたい。これからも心の中でブリッツェン…というか、時を応援したい。

 

【沢田 時のレース後コメント】

まずは応援していただいてありがとうございました。すごくコンディション良くて、1周目は先行できたし、ベストな形で進められていた。ちょっとしたミスでトラブルを起こしてしまった。そこから織田選手に水をあけられる展開になってしまった。脚が足りてなかったと思うが、悔しい。ただ、今日出せる一番いい結果だったかなとは思う。コース脇で切れ目なく続いた声援は、本当に力になった。小坂選手が長年、宇都宮ブリッツェンのシクロクロス選手として、これだけこの競技を広めてくださったお陰だと思う。小坂選手に感謝したいし、今日来ていただいたファンの方に本当に感謝したい。(小坂選手がチームを去ることについて聞かれ、涙ながらに)小坂選手がいなくなることは、本当に寂しい。だからこそ、本当は優勝したかった…。来年も宇都宮で全日本がある。チームを引き継ぐと言うか…、本当に…、あの…、尊敬している選手なのでまだまだ追いかけたいし、一緒に走る機会もあるので、トレーニングも共にして、強い織田選手に立ち向かえたらと思う。とにかく、小坂選手には「ありがとうございました」と言いたい。

 

▼リザルト

1位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) 0h58’27”

2位 沢田時(宇都宮ブリッツェン) +1’40”

3位 竹内遼(GHISALLO RACING) +2’06”

5位 小坂光(宇都宮ブリッツェン) +3’26”

 

※全リザルトは下記のURLからご確認ください。
https://jcf.or.jp/download/com30_result_men-elite/?wpdmdl=75767&refresh=65a3a1e0d95a21705222624