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2023/10/15 レース

【レポート】2023ジャパンカップサイクルロードレース

【レポート】2023ジャパンカップサイクルロードレース

 

▼開催日

2023年10月15日(日)

 

▼スタート&フィニッシュ

宇都宮市森林公園(栃木県宇都宮市福岡町1074-1)

 

▼出場選手

谷 順成

阿部 嵩之

小坂 光

堀孝 明

フォン・チュンカイ

沢田 時

 

競技概要

宇都宮市森林公園周回コース 10.3km×13周 総距離:133.9km(山岳賞は3周、6周、9周、12周)

出走:107名(19チーム)

スタート時間:10時00分

▼レースレポート

2023年で30周年を迎えたジャパンカップサイクルロードレース。1990年に行われた世界選手権自転車競技大会のメモリアル大会として、2年後の1992年から開催されて日本中の自転車ファンを熱狂させてきた。レースの一番の見どころとなっている古賀志山の林道は世界選手権時は反時計回りに上ったが、ジャパンカップから時計回りに変更。かつてのコースは、萩の道から鶴カントリークラブ倶楽部前の激坂を経由するもう一つの難所もあったが、2015年から現在のコースになっている。

 

早朝から強い雨に見舞われた15日の宇都宮市。前日のクリテリウムは秋晴れで絶好のレース日和ということもあり、過去最高となる5万5000人の観客が大通周回コース周辺に訪れていた。だがロードレースは当初、これまでの14周(144.2km)から2周増えた16周回(164.8km)が予定されていたが、悪天候により13周(133.9km)に短縮されることに。古賀志山のヒルクライムも13回と減る形となったが、選手たちにとって厳しいコースには変わらない。苦しい展開が予想された。

 

雨のレースとなったが、宇都宮ブリッツェンのキャプテン・谷順成は「晴れが望ましかったが、日本のチームにとって決して雨は不利にならないと思う。雨でチャンスも出てくるし、プラスに考えている」とレース前に語っていた。

 

周回数こそ変更されたが、レースは定刻にスタート。1周目から海外勢がアタックを仕掛け、集団は二つに分裂。2周目に入るとジュリアン・アラフィリップ選手(フランス、スーダル・クイックステップ)ら4名が逃げを決めた。3周目の上りで抜け出したアラフィリップ選手が最初の山岳賞を獲得。そのまま独走し、世界選手権を二度制した脚力で宇都宮に集まったファンを魅了する。

 

アラフィリップ選手から40秒遅れで20名、2分弱遅れで約40名が追走。宇都宮ブリッツェンは40名に谷、沢田時が残っていた。しかし、雨の影響か頭痛で堀孝明が、さらに小野寺玲の代走としてエントリーした小坂光も降車することに。堀が自転車選手になった原点は、チームを創設した廣瀬佳正副社長が現役時代に山岳賞を獲得したジャパンカップだ。それだけに「宇都宮ブリッツェンの選手として臨んだ最後のジャパンカップ、最低限完走はしたかった。3回目の山岳賞を狙っていた」と悔しさをにじませた。

 

小坂は2009年のチーム創設時初期メンバーだ。彼にとってジャパンカップ出場は同年と2010年以来となる3度目。「久しぶりのジャパンカップで浴びる声援。古賀志山の上りでは涙が出そうになった」と、途中リタイアとなったが宇都宮ブリッツェンの選手として出走できたうれしさを噛み締めた。

雨足が弱まらないように、先頭を走るアラフィリップ選手の脚力も勢いは変わらず、7周目に入っても一人旅は続いた。約30名の第2集団とは1分強のアドバンテージ。谷や沢田のいる第3集団とは2分半強のタイム差がついていた。

 

宇都宮ブリッツェンは阿部嵩之も中盤でバイクを降りることになった。幾度となくジャパンカップを走ったベテランの阿部だが「雨で周回も減ったせいか、今まで経験した中で一番速い入りだった。空いた差を埋めるのが難しいくらい速かった」と振り返る。赤いジャージで走る最後のビッグイベントを完走できなかったことに「残念な形で終わったが、まだ引退するわけではない。(沿道から)頑張れアベタカ! と声がかかってうれしかった。だからこそ声援に応えたレースがしたかったが今日は叶わなかった。次のチームでもまた出たい。それを目標に頑張りたい」と続けた。
8周目の古賀志山を越えるとアラフィリップ選手に後続が追いつき、5名の逃げに。しかし、そのすぐ背後には15名ほどがいる。9周目、3回目の山岳賞はジェームス・ノックス選手(イギリス、スーダル・クイックステップ)が獲得。トップから20番通過までが約30秒のタイム差だ。そこに国内選手は岡本隼選手(愛三工業レーシングチーム)が生き残っていた。谷、沢田は2分15秒ほど遅れた追走集団にいる。

 

レースも佳境に入り、残り3周に突入するとアラフィリップ選手が再び仕掛けた。スタート&フィニッシュ地点を単独で通過して観客を沸かせると、そのまま古賀志山を駆け上がる。まるでレース序盤の再現のようだったが、昨年5位のマキシム・ファン・ヒルス選手(ベルギー、ロット・デスティニー)が追いつき、山頂をトップ通過して逃げ始めるが後続も活性化。2013年の世界チャンピオン、ルイ・コスタ選手 (ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)がアタックし、単騎で残り2周へ突入。アラフィリップ選手、コスタ選手と歴代の世界王者たちが宇都宮で逃げる姿は、まるで30周年記念大会を祝うかのようだ。

 

昨年6位のギヨーム・マルタン選手(フランス、コフィディス)、フェリックス・エンゲルハルト選手(ドイツ、チーム・ジェイコ・アルウラー)が追いつき3名になると、ついにファイナルラップに突入。後続とは1分06秒のアドバンテージがあった。最後の山頂を越え、県道に抜け、田野町交差点を左折しても3名は牽制の様子も見せずに突き進む。
残り200mを切って勝負に出たのはコスタ選手だ。元世界王者らしくスプリント勝負でも一枚上手の抜け出しで、見事に優勝をもぎ取った。ジャパンカップサイクルロードレースを制した若手選手はヨーロッパでも飛躍的に活躍することが多いが、今回は世界を制したベテランのコスタ選手による勝利。偉大な選手による優勝で30周年記念大会は幕を閉じた。
宇都宮ブリッツェンは谷が28位、沢田が39位で完走。世界トップクラスの選手たちを前に思うような戦いをすることはできなかったが、UCIポイント圏内である40位以内での完走は果たすことができた。谷と沢田はフィニッシュ時は一つでも順位をあげるためにもがき、二人でポイント獲得することができた。レースの完走者は48名。半数以上がリタイアするハードな大会となった。

 

なお、昨年まで宇都宮ブリッツェンのキャプテンを務めた増田成幸選手(JCL TEAM UKYO)は42位で完走している。2022年10月のJCLしおやクリテリウムで落車し、骨盤骨折の大怪我を負ったが長い入院生活を経て、シーズン半ばからレースに復帰していた。宇都宮市民にも増田選手のファンは多く、宇都宮ブリッツェンと同様に今後もジャパンカップを盛り上げてくれるであろう一人としてここに記しておきたい。

 

ジャパンカップサイクルロードレースの観客数は7万4000人。あいにくの天気だったが多くのファンたちが選手の躍動に胸を高鳴らせた。

【西村大輝監督のレース後のコメント】

スタート直後から必ず速くなると予想していたが、その通りとなり元世界チャンピオンのアラフィリップ選手らトップ選手がレースを展開した。谷順成と沢田時で少しでも上の順位を狙ってUCIポイントを獲る予定だった。その二人がポイント圏内に入り、いい仕事をしてくれた。理想を言うなら上限はないが、今年から加入してチームの看板選手になっている二人が残ってくれたのは次に繋がる収穫。地元のファンの方々が選手やチームカーに声援を送ってくださり、うれしくもあり、選手の力にもなったと思う。

各選手、ジャパンカップにはものすごく思い入れがある。チームの目標だったUCIポイントを獲ることは達成できて、いい大会になった。谷、沢田とコンディションが良く、残りのシーズンもチーム一丸となって戦っていきたい。

 

【谷順成のレース後のコメント】

13周に短縮されたことと雨により、1周目からハードな展開になった。ブリッツェンは自分と沢田が残りチームとしては最低限の走りができたと思うが、ワールドツアーチームと比べてまだまだ力の差を感じた。古賀志山の下りで背後に取り残されるとそのままレースが終わってしまう形だったため、やはり下りで前に入らないと勝負ができない。チームの人数を残せたらよかったが、他のチームも残せていなかった。今回は自分と沢田、狙わなければいけない選手が残ることはできた。常に二人でコミュニケーションを取り、最後まで戦えた。

雨の中、古賀志山の上りなどでお客さんがたくさん声援を送ってくれた。それが僕たちの力になり、本当にホームの力を借りて僕らは走っていると感じた。今日のレースはチームにとって良い糧となるので、それを次の大会に繋げられるためにも全員で強くなっていきたい。

【堀 孝明のレース後のコメント】

ジャパンカップで廣瀬さんが山岳賞を獲る姿を見て、自転車選手になろうと思った。自分の原点の大会。宇都宮ブリッツェンの選手として臨んだ最後のジャパンカップで最低限完走はしたかったし、3周目の山岳賞を狙っていたから悔しい。これはもう一度ここに戻ってこいと言うメッセージだと思う。次のチームに行っても、ジャパンカップに戻ってきます。

 

▼リザルト

1位 ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) 3:28:22

2位 フェリックス・エンゲルハルト(ドイツ、チーム・ジェイコ・アルウラー) +0:00

3位 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)) +0:00

 

28位 沢田時(宇都宮ブリッツェン) +08:07

35位 谷順成(宇都宮ブリッツェン) +09:09

DNF 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)

DNF フォン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン)

DNF 小坂光(宇都宮ブリッツェン)

DNF 堀孝明(宇都宮ブリッツェン)

 

▼山岳賞

3周目:ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)

6周目:ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)

9周目:ジェームス・ノックス(イギリス、スーダル・クイックステップ)

12周目:ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)

 

 

▼アジア最優秀選手賞

岡本隼選手(愛三工業レーシングチーム)

▼23最優秀選手賞

エドアルド・ザンバニーニ(バーレーン・ヴィクトリアス)

 

※全リザルトはこちらから
https://www.japancup.gr.jp/sites/default/files/documents/2023/10/2023JC_Communique6_Result_CR.pdf