スタートは実は少し失敗をした。ペダルのキャッチをし損ねたのだ(ビンディングペダルと言って、スキー靴のようにシューズをペダルにはめ込むシステムがあり、そこにはめ損ねた)。だが今の沢田は冷静だった。宇都宮ブリッツェンに移籍してチームメイトと積んできたロード練習。このコースはスタート後の平坦区間が比較的長く、すぐにペダルをはめ直し、集団の中でターゲットとなる選手を見つけ、冷静に後ろにつくことができた。宇都宮ブリッツェンに移ってきて、集団の中での位置取りが冷静になったという沢田。
そしてターゲットとしていたのが、平林安里選手(TEAM SCOTT CHAOYANG TERRA SYSTEM)だ。平林選手は下りが速く、沢田は、まず最初の長い下りで平林選手の後ろについてリズムよく下り、次の激坂「桜坂」で平林選手を離しに掛かる作戦に出た。
この大会の前、沢田は下りの練習を増やした。フルサスバイクは、下りの感覚がかなり変わるし、ましてや、今年ここまでメインにしていたロードバイクやシクロクロスバイクともまったく違う。新しいバイクで下りの感覚を体に植え付け、オフロードコースへの目も養っていった。
沢田の作戦は見事的中し、2周回目に入るときには、平林選手と数秒の差が開く。しかしまたここは冷静に、意図してスピードを緩める沢田選手。下り区間は平林選手の後ろにつき、再び桜坂で引き離す。全7周回の内、2周目で独走は少し早いようにも感じていたが、調子の良さと、他選手の状況を見て、沢田は一人旅のほうの道を選んだ。
独走状態になってからは、パンクや落車がないよう、下りはスピードを緩めてていねいに下り、上りでスピードアップを繰り返していくうち、ライバルたちをどんどん置き去りに。