▼レースレポート
2022シーズンもいよいよラストレース。清水裕輔監督が指揮する宇都宮ブリッツェン最後の公式戦は、3年ぶりの開催となるツール・ド・おきなわ 男子チャンピオンロードレースだ。6月下旬の大雨でコースが一部変更となったが国内レース最長距離となる200kmの長丁場は変わらない。沖縄県北部の海沿いを中心に走るコースはアップダウンも多く脚力が試され、UCI(国際自転車競技連合)のアジアツアークラス1.2として行われるが、今年は国内14チームによる争いとなった。
宇都宮ブリッツェンにとってツール・ド・おきなわは、増田成幸が過去3度の優勝(2014、2016、2019年)を成し遂げた相性のいいレース。だが、増田は10月22日開催の湧水の郷しおやクリテリウムでの落車で大ケガを負ってしまい戦列を離れ、今大会はスプリンターの小野寺玲を中心とした布陣で挑んだ。
まだ薄暗い6時45分にスタートし、最初に動いたのは宮崎泰史だ。時計が7時を回るころ、集団からスルスルと単騎で飛び出すとそのまま逃げることに成功。独走力のある宮崎はライバルチームにとって脅威だが、フィニッシュまで5時間を越えるレースだけに序盤の逃げは容認されたようだ。
今シーズンからチームに加入した宮崎。新人賞を獲得した5月のツアー・オブ・ジャパンをはじめ、JCLシリーズ戦ではアシストとて記憶に残る走りを何度も見せたものの9月に体調を崩し、10月のジャパンカップも本調子で臨めなかった宮崎。この日は一人旅を始めるとどんどん集団との差を広げ、気がつけば11分差のアドバンテージを得ることに。2回ある山岳賞ポイントはもちろん連続でトップ通過だ。
残り60kmが見えてきたころ、宮崎は集団から飛び出していたバトムンク マラルエルデン選手(レバンテフジ静岡)に追いつかれそのまま後退。間も無く宮崎は集団に吸収された。100km以上に渡る孤独な逃げは終わってしまったが、この日の走りは来季への自信につながるはずだ。
残り50kmを切って、マラルエルデン選手と集団の差は4分20秒ほど。ロードレースと個人タイムトライアルの両種目でモンゴル選手権を制した経験のある選手だけに、集団もあまりのんびり構えてはいられない。すっかり青空になった空の下、じわじわとタイム差を詰めていく。残り40kmでタイム差は2分30秒を切り、残り35kmで1分ほどになった。
残り30kmを前にしてマラルエルデン選手は吸収され、そこから集団が一気に活性化。宇都宮ブリッツェンからは阿部嵩之が前方に出て揺さぶりをかける。前半は宮崎が逃げ続けたため、チームメイトは集団内で脚を休ませておくことができた。次に動いたのは小野寺だ。新城雄大選手(キナンレーシングチーム)、エンクタイヴァン ボローエルデン選手(レバンテフジ静岡)と共にアタックをかけた。吉岡直哉選手(チーム右京)もそれに続く。
登り坂に差し掛かると、小野寺は後ろを気にしながらもペダルを踏み独走を始める。スプリンターとされる彼だが、個人タイムトライアルでも上位に来るほどの独走力も兼ね備えている。後続とのタイム差は残り20kmで1分になった。
後続はチーム右京の3選手が牽引して小野寺の背中を追う。残り10kmでタイム差は20秒まで縮まり、番越トンネル手前で小野寺は捕まってしまった。トンネルを抜けて仕掛けたのはベンジャミ プラデス選手(チーム右京)だ。ライバルたちを振り切る圧倒的なパワーで坂を駆け上ると、そのままフィニッシュのある市内まで突っ走る。独走でツール・ド・おきなわ初優勝を飾った。
宇都宮ブリッツェンは宮崎が山岳賞を獲得し、最高位は阿部の6位だった。