▼レースレポート
JCLの最終戦となる秋吉台カルストロードレース。特別天然記念物「秋芳洞(あきよしどう)」の上に広がる日本最大のカルスト台地が舞台で、2011年の山口国体でも使用されたダイナミックなコースが魅力だ。1周29.5kmを4周回、総距離118km。中級山岳とも言える上りの厳しいコースで、10分弱上り続ける箇所もあるほど。特にフィニッシュまで残り1kmの勾配が平均勾配10.8%と厳しく、スプリンターの小野寺玲は「周回を重ねるごとにその勾配が厳しくなるように感じる」と言う。さすが「カルストベルグ」と呼ばれるだけはある。
宇都宮ブリッツェンは小野寺が個人総合1位、ポイント1位を前日の山口ながとクリテリウムで確定させており、残るはチーム優勝争い。2連覇を目指すチームであるが、このJCL最終戦と9月13日に開催されるツール・ド・おきなわ(JCLポイント対象レース)の2レースを勝たなければ、それは達成されない。
チームの作戦は、強力な逃げには乗って勝負するというもの。特にチーム右京は逃げを作ると目されていたが、前半2周回は目立った逃げはできず。ただ、3周回目に入る直前のカルストベルグで、チーム右京3名、キナン3名を先行させてしまう。スタートフィニッシュラインを超えてもこの6人は先を行き、しばらく進むが、そこに堀孝明が単独で追いつく。これをきっかけに小野寺を含む小集団も追いつき、3周回の中盤では振り出しに戻る大集団に。
スタート前の予想とは違うスローペース&決定的な逃げが決まらない中で、3周回終盤にひとり飛び出したのが阿部嵩之だ。これにより集団は一列棒状に。阿部はほどなく捕まるが、活性化した集団はカルストベルグでバラバラに。そしてまたしても、チーム右京3名、キナン3名が先行してしまう。どうやらライバルたちは、カルストベルグだけで勝負をしたいようだ。この6名の中には優勝候補のひとり、ベンジャミン・ダイボール選手(チーム右京)、昨年の覇者である山本大喜選手(キナン)もいる。強力な逃げにレースもこれで決まりかと思われたが、宇都宮ブリッツェンの働きもあり集団はひとつに。逃げを捕まえたところで牽制が入りスピードが緩むが、アタックの波状攻撃に小野寺が反応。苦手意識のあるこのレースではあるが、小野寺の勝ちに挑む姿が随所で見られる。
しばらく牽制が続く中レースが進むが、堀が山本元喜選手(キナン)と2名で逃げを決め、後ろは10名の小集団に。この中には小野寺、阿部もおり、JCLリーダージャージでの勝利に期待が高まる。
先頭は2名を追加して4名となって最後の上りに入り、山本選手が少し前へ。堀は遅れるも3位表彰台圏内で粘る。後ろもバラバラとなり個人の粘り勝負となる中、ベンジャミ・プラデス選手(チーム右京)がスルスルと前へ出て、そのまま優勝をもぎ取った。堀はゴール後蛇行するほど出し切り6位に。小野寺も9位と、このコースとしては上々の結果でゴールした。
チーム総合優勝は逃すことになりそうだが、小野寺は個人総合優勝のイエロージャージ、ポイント賞1位のブルージャージの2枚を獲って、JCL最終戦を終えた。上りもスプリントもこなすマルチライダーは本場欧州で目立ってきている昨今、小野寺はまさに、新しい時代の選手として成長してきているようだ。