▼レースレポート
3年ぶりの開催となるジャパンカップクリテリウム。2010年の第1回大会以降、宇都宮市では秋の風物詩となり市民はもちろん日本中のサイクルロードレースファンが集うクリテリウム大会だ。翌日に行われるジャパンカップサイクルロードレースに出場する海外招聘チームのメンバーも参加するため、毎年ハイレベルな戦いが期待されている。
宇都宮二荒山神社前(バンバ広場)をスタート&フィニッシュとして行われる1周回2.25kmのコースは、普段は市民のクルマが行き交う大通り。基本は平坦なコースだが、フィニッシュ前はゆるい坂となっているため最終局面は力勝負となる。
レース前には2015年、16年とクリテリウムを連覇した別府史之さんの引退セレモニーが開催された。長年本場ヨーロッパで活躍し、「Fumy」の愛称で親しまれた別府さんに沿道から割れんばかりの拍手が送られた。
スタートの号砲が切られ、2周目に台湾チャンピオンのフォン・チュン・カイ選手(台湾、バーレーン・ヴィクトリアス)が積極的に動き前に出る。メイン集団は2019年の前回大会を制したエドワード・トゥーンス選手(ベルギー)を擁するトレック・セガフレードがコントロールを始め、簡単には逃げを許さない。3周目に中根英登選手(EFエデュケーション・イージーポスト)がスルスルと前に出ると、西尾憲人選手(那須ブラーゼン)と逃げ始めた。しかし集団は一定の距離を保ちながら追走し、タイム差は大きくは広がらない。4周目を終える前に渡邊翔太郎選手(愛三工業レーシングチーム)が追いつくと、フィニッシュライン直前で抜け出し最初のスプリントポイントを獲得した。
5周目に入ると4名の選手が逃げ始めたが、後続も簡単には容認しない。今年の全日本選手権覇者の新城幸也選手(バーレーン・ヴィクトリアス)らがメイン集団のスピードをあげると4名は吸収された。そこから単騎で動いたのはニールソン・パウレス選手(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)だ。頭ひとつに抜け出すと、そこにスティーブン・ウィリアムズ選手(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)、さらにギヨーム・マルタン選手(フランス、コフィディス)らが合流。二度目のスプリントポイントはパウレス選手が獲得した。
10周目にパウレス選手らは吸収され、集団が一つになると新城幸也選手が先頭に出て揺さぶりのアタックをかける。宇都宮ブリッツェンメンバーも集団前方で他チームの動きに目を光らせる。次に抜け出したのはフォン・チュン・カイ選手、シモン・ゲシュケ選手(ドイツ、コフィディス)、カミル・マウェツキー選手(ポーランド、ロット・スーダル)、新城雄大選手(キナンサイクリングチーム)の4名だ。
メイン集団はやはりトレック勢がコントロールするが、宇都宮ブリッツェンも阿部嵩之がスプリンターの小野寺玲を前方に引き上げる。3回目の12周回スプリント賞 ヴィクトル・ポトチュキ選手(クロアチア、リュブリャナ・グスト・サンティック)が獲得した。レースも終盤に入った13周回、山本大喜選手(キナンサイクリングチーム )がアタックをかけるもすぐに吸収。その直後に宇都宮ブリッツェンも動きを見せ、阿部が先頭で牽引し、増田成幸も小野寺のポジション取りのために脚を使う。
決定的な逃げが出ないまま、いよいよファイナルラップ。ティム・ウェレンス選手(ベルギー、ロット・スーダル)が単騎で抜け出すとそのまま最終コーナーに突入。しかし後続もそのまま行かせるわけがない。残り500mを切って一気に差を詰め、集団スプリントに持ち込んだ。そこで力を見せたのが前大会覇者のトゥーンス選手だ。フィニッシュ手前の坂を一気に駆け上がり勝利をもぎ取り、大会連覇を達成。トレックにとっては、別府さんに続く2度目の連覇となった。宇都宮ブリッツェンも小野寺がスプリントに絡んだが5位となった。
3位には2017年〜19年シーズンに宇都宮ブリッツェンに所属していた岡篤志選手(EFエデュケーション・イージーポスト)が入り、成長した姿を宇都宮市民に見せることができた。