▼レースレポート
前日のおおいたいこいの道クリテリウムに続き、気温30度と暑い1日となった三菱地所おおいたアーバンクラシック。街中の丘陵地帯でコーナーとアップダウンが多く、決め手となる勝負どころが少ないだけに、激しい駆け引きで生き残り合戦となること必至の大会。また、UCIポイントのつく国際レース、かつ、JCLもポイント付与対象レースで、前日、小野寺玲が増田成幸を超えて個人総合1位に浮上しており、JCLランキングも気になるところである。
同時期にツール・ド・台湾の開催でメンバーを分散させなければならないチームもある中、宇都宮ブリッツェンは体調不良だった中村魁斗を戻し6名体制。ただ逆に宮崎泰史がコンディションを崩して欠場したのがどう影響するか。
結局、その宮崎不在は杞憂に終わる。今大会はどのシーンを見ても宇都宮ブリッツェンが絡み、組織的に展開し、選手層の厚さを実感することとなった。
レース開始2周回目にして、阿部嵩之が飛び出し単独逃げに成功。そのまま合流するメンバーを待つうちに、4周回目に河野翔輝選手(ブリヂストンサイクリング)のアタックに堀孝明が反応。小出樹選手(キナンレーシング)も加わり、5周回目には阿部にジョインして、逃げに宇都宮ブリッツェンが2名と有利な展開に。集団のほうでは、誰かが動けば、チームの誰かがチェックに入りつつも、増田成幸、小野寺玲の脚を温存できていた。まるで、自転車ロードレースにおけるチーム教材にもなりそうな、上手いレース運びを見せていた。
レースは、前年覇者のフランシスコ・マンセボ選手へのチェックが厳しく、マンセボ選手をはじめ、マトリックスパワータグの激しいアタックを制する動きが多く見られ、その間隙を突いて宇賀選手が前にブリッジをした形である。宇賀は7周回目で前の4名に追いつく。
メイン集団は逃げを捕まえたいが、まとまり切らない。そんな中、重要なアタックには増田、小野寺が反応する。そんな状態で周回を重ねていき、レースはとうとう残り2周回に。逃げでは宇賀選手が加速し、一度単独にはなるが、阿部が追いつき、小出選手も合流。3名と集団との差は1分30秒。
「最後の坂に入るまで、集団に追いつかれるのではないかと不安だった」と阿部は言ったが、結局3名はそのままゴール勝負に。残り300mを切ったところで宇賀選手が加速。3番手にいた阿部は小出選手をかわし、宇賀選
手の後輪にピッタリをつき、まくりの体制。ただ、140㎞近くを逃げた阿部に対し、途中合流の宇賀選手には脚があった。もう一段ギアを上げ、阿部を引き離すと単独フィニッシュ。阿部は悔しさを前面に出しながら2位でゴールした。
組織立ってレースを組み立てていただけに、これで阿部が取っていればパーフェクトレースだったが、そこは阿部が一番わかっていて、「チームの働き、応援してくださるファンの皆さんに報いるためには、勝てれば良かった。単独で逃げるなど、余計な動きをしてしまい反省している」と、ゴール後のインタビューに答えるが、この走りこそがアベタカでもある。ただ、コンディションがいいことは証明できたと言うし、チーム力もかなり状態がいいことがわかった大分2連戦。2週間後に迫るジャパンカップへの期待は、自然と胸膨らむばかりだ。
なおJCLランキングについては、前日の三菱地所おおいたいこいの道クリテリウムで小野寺が増田の個人総合1位を逆転し、本レースを終えてもその順位をキープ。小野寺はスプリント賞1位も守っており、イエロージャージ、ブルージャージ両方の保有者となった。JCLのレースも今年残り5レース。こちらのランキングからも目が離せない。
【JCL個人総合ランキング】
1位 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) 1179ポイント
2位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 978ポイント
3位 ネイサン・アール(チーム右京相模原) 740ポイント
【JCLスプリント賞ランキング】
1位 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) 118ポイント
2位 孫崎大樹(スパークルおおいた) 86ポイント
3位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 80ポイント
※いずれも三菱地所おおいたアーバンクラシック終了時のランキング