▼レースレポート
JCL第8戦の舞台は高知県南西部にある宿毛市(すくもし)だ。四国初となる公式戦は、同時にプロ自転車ロードレースとして「日本初となる自転車専用道路を全面通行止めにした公式戦」にもなった。これは国土交通省、警察関係者、地元周辺企業、そして地域の住民らの協力によって実現したもので、宿毛市と四万十市を結ぶ「国道56号 中村宿毛道路 平田IC~宿毛和田IC手前 約4.3km地点」の2車線が利用された(大会開催中は四万十IC~宿毛和田IC間を全面通行止め)。
今大会は自動車専用道路を含む1周12.5kmを10周するが、公道に降りると細く荒れた農道を走るシーンもありテクニカルなコースとなっている。この日の気温は33度を越え、自動車専用道路は日陰も少なく太陽も選手たちを苦しめるハードな展開が予想された。コースの観戦エリアは限定されるものの、高知のよさこい祭りで使われる鳴子で応援するファンの姿も。
1周目のパレード走行を終えると序盤からアタック合戦が始まった。西尾憲人選手(那須ブラーゼン)と阿部嵩之の栃木勢が積極的な動きを見せるが、思ったよりもタイム差は広がらず決定的な逃げにはつながらない。しかし3周目終了時の中間スプリントを阿部が獲得。
レースが落ち着きを見せたのは4周目後半だ。山本大喜選手(KINAN Racing Team)、ベンジャミン ダイボール選手(Team UKYO SAGAMIHARA)、横塚浩平選手、中島雅人選手(ともにVC福岡)、そして西尾選手、阿部の6名による逃げが決まった。自動車専用道路の下りを利用して抜け出した彼らは後続を引き離していく。
7周目を終えて逃げ集団は5名に減ったが(中島選手が離脱)、メイン集団とのタイム差は2分10秒ほどをキープ。レースも終盤に入り、揺さぶりをかけてきたのがダイボール選手だ。残り2周手前でアタックすると、前半から果敢に攻める走りを見せて消耗していた阿部がここで一瞬遅れる場面も。だが阿部は千切れず食らいついていく。
後続メイン集団は宇都宮ブリッツェンのメンバーが積極的に前に出てコントロール。最後は逃げを捕まえて、スプリンターの小野寺玲で勝負したいところだ。自動車専用道路の上りでダイボール選手が再び仕掛けると、折り返しを単独通過。下りを利用することで山本選手ら4名を引き離し、10秒のアドバンテージを得てペダルを回す。メイン集団との差は1分40秒ほどになった。
残り1周を目の前にして、ダイボール選手に後続4名が追いついた。お互いの様子をうかがっていた5名だが、自動車専用道路手前で山本選手が一人抜け出しに成功。一気に加速して引き離しにかかる。
自動車専用道路の上りに差し掛かるころには、4名とメイン集団の差が詰まってきた。先頭を走る山本選手と4名のタイム差は10秒、その25秒後ろにメイン集団だ。間もなく4名は吸収されると、メイン集団はリーダージャージを着る増田が牽引。山本選手を捕らえることに成功した。
一つになった集団が公道に降りると、次から次へとアタックが始まる。そこに加わったのが小野寺だ。残り1kmを切って牽制状態から新城雄大選手(KINAN Racing Team)、小石祐馬選手(Team UKYO SAGAMIHARA)ら6名によるスプリント勝負へともつれ込み、Sparkle Oita Racing Teamの孫崎大樹選手が巧みなコース取りで優勝を手中に収めた。小野寺は2位となり、「チームメイトが僕の勝負できる展開に持っていってくれたが、最後決めきれず悔しい。力勝負で負けた」と孫崎選手を讃えた。
総合1位のイエロージャージは増田がそのままキープ。小野寺も6位に入り、ブルージャージを堅守している。チームランキングも引き続き1位だ。
また、3周回終了時のスプリント賞「はた結び賞」を阿部が受賞。逃げに入ってから苦しかったと笑いながらも、「10数年選手をやっているが、自動車専用道路を走るのは今日が初めて。このレースを開催するにあたり尽力していただいた方々には、いい経験をさせていただいて、本当にありがとうございます」と関係者に感謝の気持ちも伝えた。