▼レースレポート
3日間すべてを通して晴天に恵まれたツール・ド・北海道2022。最終日も標高749mの峠が44.6㎞地点にあり、その後もアップダウンの激しいコースが選手の脚を削る。最後40㎞ほどは下り基調になるため、スプリンターにも可能性があると言われているが、フィニッシュ前500mは3.2%の勾配が。3日間の死闘の末にたどり着くこの“ちょっとした上り坂”が、結果にどう響くのか。
前日に総合7位となった増田成幸と1位の門田祐輔選手(EF エデュケーション-NIPPO ディベロップメントチーム)との差は4分25秒。正直1日で逆転できるタイムではないが、スポーツは何があるかわからない。宇都宮ブリッツェンは入念なミーティングと準備を経て、勝利に向かうスタートを切った。
レースは序盤から逃げが決まり、宇都宮ブリッツェンは集団待機。リーダーの門田選手、総合2位のトマ・ルバ選手(キナンレーシングチーム)、同3位の松田祥位選手(チームブリヂストンサイクリング)、同4位谷順成選手(那須ブラーゼン)も集団におり、残り80㎞地点で先頭10名と集団の差は3分。先頭集団には逆転を逃げで狙う総合5位今村駿介選手(チームブリヂストンサイクリング)、同8位のガルシア・マルコス選手(キナンレーシングチーム)がおり、各チームの思惑が錯綜する。
逃げはそのまま最初の山岳ポイントの上りへ。宇都宮ブリッツェンはここで一気に形勢逆転を狙い、列車を組んで増田を前に引き上げる。増田は他チーム2名の選手と共にメイン集団から飛び出し、逃げを追うが、先頭をとらえることができず一度集団へ戻る。
やがて阿部嵩之がメイン集団から遅れ、宇都宮ブリッツェンは増田と小野寺玲の2名に。集団はリーダーチームのEF エデュケーション-NIPPO ディベロップメントチームに加え、愛三工業レーシングチームが積極的に牽引するが、逃げのほうも活性化しているので、なかなか差を詰められない。残り40㎞でタイム差3分50秒。残り30㎞の支笏湖では、集団のほうも2つに割れ、全体のスピードが少し落ちてしまう。
その後、残り20㎞でタイム差2分10秒。自転車ロードレースは10㎞あれば1分のタイム差を縮められると一般的に言われているが、このタイム差はそれが可能かどうかの瀬戸際な数字。宇都宮ブリッツェンはステージ勝利を狙いつつも、安全にフィニッシュをしてこの大会を終えることも頭に置く。
結局、逃げはそのまま捕まることなく、第1ステージに引き続き今村駿介選手(チームブリヂストンサイクリング)が勝利。約1分差で入ってきた集団では、小野寺が最後の意地のスプリント。上り基調ではあったが、昨年全日本チャンピオンの草場啓吾を秒差なしでかわし、小野寺が集団頭を取ってステージ9位で入った。増田も小野寺と同じ集団内でフィニッシュ。総合8位で、最低限の目標にしていたUCIポイント獲得(10位以内に付与)を死守した。
ゴール後、監督の清水裕輔は「選手はみな、やるべきところでやるべきことやった」と称える。「選手というものは出し切って次に切り替えるもの。こうして全日程を終え、清々しく『お疲れさん!』と声を掛け合い、元気にしていますよ」とにこやかに語る。
宇都宮ブリッツェンとしては、幸先の良い第1ステージののち、第2、第3ステージは思い描いていた内容とは少し違っていたが、切り替えて、次の高知県宿毛市ロードレース(9月25日開催)に備えるのみだ。