▼レースレポート
コロナ禍で2020、2021年が中止となり、3年ぶりの開催となったツール・ド・北海道。2018年も地震の影響で中止となっているため、増田成幸が個人総合優勝に輝いた2016年は3大会前という計算になる。
最大のライバルとなるとみられたチーム右京は、選手に新型コロナ陽性者があったためチーム判断で欠場に。それでもプロトンには、華々しい経歴を持った実力者たちが揃っている。
宇都宮ブリッツェンは宮崎泰史が病欠のため、増田成幸、阿部嵩之、堀孝明、小野寺玲の4人での出場(チームは最大5人まで出場可)。阿部は北海道出身で地の利があり、小野寺は今年登坂力をつけてきているので、4人でも勝利に絡む走りが充分期待できると思われる。
コースは国内でも数少ないラインレース(周回ではなく、原則スタートフィニッシュ地点が違うレース)のステージレースで、昨年開催予定だったコースをそのまま使用する。第1ステージは途中3つの山岳賞ポイント、2つのホットスポットが設定され、上りも厳しいが、途中はトンネルが多く、下りも危険個所がみられるハードなコースだ。
快晴の中スタートした集団は序盤から有力選手が動き、激しい戦いに。24.5㎞地点の最初の朝里峠は阿部が5位通過、40.6㎞地点の最初のホットスポットは増田が3位通過し(ボーナスタイム1秒獲得)、宇都宮ブリッツェンも積極的に前で展開していく。
勝負の分かれ目は54.1㎞地点の2回目の山岳ポイントである毛無峠への上り。直前のホットスポットで集団が縦に伸び、どの選手もきつそうにしているところで、増田が岡篤志選手(EF エデュケーション-NIPPO ディべロップメントチーム)に声を掛けてアタック。集団は分裂し、増田、小野寺を含む18名の先頭集団が形成された。やがてそれは17名となり、2回目の毛無峠は増田が5位で通過をした。
2回の峠を経ても小野寺は17名に留まり、2回目のホットスポットは2位通過(ボーナスタイム2秒獲得)。ツール・ド・北海道は上りが多く苦手意識があると言うが、オフから力をつけた地脚を、今回も垣間見せる走りとなった。
集団との差が最大1分20秒ほどついた17名だったが、一時は15秒差まで縮まり、阿部が含まれる第2集団に迫られた。それでも粘りを見せ、17名のまま3回目の山岳ポイントとなる当丸峠へ(126.1㎞地点)。その上りで仕掛けたのが増田だ。「頂上付近で仕掛けても大きなタイム差が得られないと思ったので、上り口で行くしかないと考えた」と言う増田のアタックに、これに追走したのがキナンレーシングチームの3名。昨年JCLの年間個人総合優勝となった山本大喜選手、2013年ツール・ド・北海道個人総合優勝のトマ・ルバ選手、同じく2017年に北海道を総合優勝したマルコス・ガルシア選手だ。増田を含めれば4名のうち3名がこの北海道の覇者という最強グループで、後ろに45秒差ほどつけて当丸峠を通過。通過順位は山本選手、増田、ルバ選手、ガルシア選手の順だった。
しかし「このままフィニッシュまで行けると思った」という増田の思惑とは少しずれ、下りを利用して追走5名が増田たちに合流。そして残り15㎞付近の上り基調で、今度は山本選手がアタック。それに反応したのが増田と、追走5名にいた今村駿介選手(チームブリヂストンサイクリング)だった。
3人は後続を1分近く離し、フィニッシュへ向かう。ただ、残り3㎞を切ったあたりで山本選手は、後続のチームメイトを待つ作戦を取り、先頭交代へは加わらず。今村選手と増田で後続とのタイム差を見ながら回していき、残り1㎞を切ってからはスプリント力で勝る今村選手が先行。そのままフィニッシュとなって、増田選手はステージ2位。総合順位も2位となり、トップとの差はわずか3秒。ステージ優勝こそ逃したが、ステージレースの初日として上々の滑り出しとなった。
明日の第2ステージは、今大会最も山岳の厳しいステージと言われており、ニセコを中心に186㎞で争われる。前半に標高741mの新見峠が控えており、スプリンターの今村選手に、クライマーの増田がどう挑むか。総合1位への逆転も期待したい。