▼レースレポート
JCL広島大会2連戦、2日目は広島市西区商工センターに設けられた周回コースを利用したクリテリウムだ。広島と言えば中央森林公園でのレースは1994年のアジア大会以降、全日本選手権でも多く使用されているが、2018年7月に市街地初となる「広島クリテリウム」が開催された。
レース前、増田成幸のバイクに装着しているサイクルコンピュータは39度を表示。酷暑の中でスタートの号砲が鳴った。序盤は集団前方をマトリックスパワータグ 、 KINAN Racing Team、宇都宮ブリッツェン勢がキープ。地元のヴィクトワール広島は阿曽圭佑選手らが虎視眈々と逃げるタイミングをうかがっていた。
広島市は地元チームを抱えるため、地域もレースを盛り上げるために積極的だ。
これは宇都宮市と宇都宮ブリッツェンのように、地域密着型チームの存在ならではだろう。
広島クリテリウムでは中間スプリントポイントを3ヶ所設けている。8周目完了時の最初の中間スプリントは、コーナーの立ち上がりで仕掛けた宇賀隆貴選手(Team UKYO SAGAMIHARA)が先行したが、追走してきた黒枝咲哉選手(Sparkle Oita Racing Team)が獲得。その真後ろにいた阿部嵩之は中間スプリントを3位通過すると、そのままペダルを踏み込み単独で逃げ始める。しかし阿部を行かせてはならぬと後続も動き、なかなか差を広げることはできない。
だが12周目で阿部を含む8名が抜け出しに成功し、逃げ集団が形成された。ヴィクトワール広島の久保田悠介選手が加わっているため、沿道のファンは大盛り上がりだ。
8名には山本大喜選手(KINAN Racing Team)、トマ・ルバ選手(KINAN Racing Team)、孫崎大樹選手( Sparkle Oita Racing Team)、 武山晃輔選手( Team UKYO SAGAMIHARA)、バトムンク・マラルエルデン選手(レバンテフジ静岡)、小森亮平選手(マトリックスパワータグ)と各チームの中核を担う選手がそろっている。
16周回完了時、2回目の中間スプリントポイントは孫崎選手が1位通過すると、マラルエルデン選手は逃げ集団から離脱した。7名とメイン集団とのタイム差は27秒ほど開き、選手たちは協力して先頭のローテーションをする。
レースは落ち着きを見せ、24周回完了時で3回目の中間スプリントポイントは武山選手が1位通過した。その直後、単騎で抜け出したのは2位通過のルバ選手。フランス出身、36歳のベテランは2021年ツアー・オブ・ジャパン個人総合2位、今年も個人総合3位と底力があり、逃してはいけない一人だったがタイミングよく飛び出した。
そのまま最終周回まで進み、ルバ選手と後続の差は9秒。久保田選手が欠けて5名となった後続だが、表彰台を狙って牽制も始まり先頭とのタイム差は縮まらない。独走のままルバ選手が優勝を決め、2日続けてKINAN Racing Teamが表彰台センターをもぎ取った。
後続5名は表彰台をかけたスプリント勝負となった。そこで脚力を見せたのが阿部だ。ウエイトトレーニングでスプリント力も向上させていた成果が出て2位を獲得する。昨年の山口ながとクリテリウム以来(宇都宮ブリッツェンが1位小坂、2位小野寺、3位阿部と上位独占)の表彰台となった。
阿部はレース後に「クリテリウムと言えば阿部嵩之というのを少しだけ見せられた。次回以降のクリテリウムにも期待してほしい」と笑い、チームとしても今後戦力の幅が広がりそうだ。
宇都宮ブリッツェンは増田が個人総合ランキング1位のイエロージャージをキープ。「チームとして逃げグループにもう一人乗せられなかったのが反省するところ」と増田。またスプリント賞のブルージャージも小野寺が守り抜いた。