広島県が緊急事態宣言を受けたことにより、10月開催へと延期された昨年の全日本選手権。それから8ヶ月が経ち未だマスク着用の生活が続くものの、2022年は慣例である6月最終週に大会の幕が開いた。
宇都宮ブリッツェンはロードレース男子エリートに増田成幸、阿部嵩之、小坂光、堀孝明、小野寺玲、貝原涼太、及川一総、宮崎泰史の8人をエントリー。昨年と変わらず日本一を決める会場となった中央森林公園サイクリングロードは1994年アジア大会以降、ロードレースにとっておなじみの場所。3月開催の西日本チャレンジロードレースでも使用されており、選手にとって勝手知ったるコースだ。
11時にスタートの号砲が鳴った。空には灰色が広がってきており、気温は下がってきたが雲行きは怪しくなってきていた。
前半仕掛けてきたのはチームブリヂストンサイクリングだ。松田祥位選手が単騎での逃げを決め、1周目を終えて後続に40秒ほどリードを保つ。メイン集団では地元チームのヴィクトワール広島勢が積極的に前に出る。宇都宮ブリッツェンは阿部、小坂らが集団前方に位置して、増田は中程を走る。
逃げていた松田選手は集団に戻ったが、ここからサバイバルレースの始まりだった。3周目に5名参加のTeam UKYOが全員で前方のコントロールを始めたかと思うと、ヨーロッパから全日本出場のために帰国した新城幸也(BAHRAIN VICTORIOUS)も5周目に動き出す。また、Jプロツアーで今季6勝と破竹の勢いを見せる小林海(マトリックスパワータグ)も反応し、どんどん集団が活性化していく。だが宇都宮ブリッツェンの小坂、及川は集団から遅れてリタイヤ。
勢いが出てきた集団の動きにチェックを入れるのは宮崎だ。宇都宮ブリッツェン加入1年目ながら5月のツアー・オブ・ジャパンで新人賞獲得(総合9位)、5月後半のツール・ド・熊野で落車によるリタイヤをしたが、「骨に以上はなかったので5日後くらいから練習をしていた。練習は若干ボリュームが落ちたが、走りが阻害されるような痛みはなかった」として初のエリートカテゴリでの出走を決めた。
レースも半分を過ぎるとメイン集団の人数もスタート時の半分程度になっていた。大きな動きが出たのは8周目だ。マトリックスパワータグの小森亮平選手、チームブリヂストンサイクリングの河野翔輝選手、そして宇都宮ブリッツェンから阿部の3名が集団からの抜け出しに成功。さらにCIEL BLEU KANOYAの白川幸希選手も合流して、4名の逃げ集団が形成された。一方で堀と貝原が6周でレースを終えている。
「昨年の全日本のようにチームで2番目、3番目の選手が残って集団スプリントになるシチュエーションになるなら僕も成績を残したい。一泡吹かせてやろう、みたいな選手をチェックしている」(阿部)
大会前にそう語っていた阿部だったが、まさにそんな展開が訪れた。後続とのタイム差は30秒〜1分30秒辺りで前後しながら、しばらくは4名による小旅行となった。しかし、後ろに控える優勝候補たちも黙っていなかった。海外チーム在籍のため単独参加の新城幸也選手がメイン集団へ揺さぶりをかけ、脚力のない選手たちがふるいに掛けられ次々と脱落していった。宮崎は足をつって11周目で集団から遅れてしまった。
阿部たちの小旅行も終わりを告げた。やはり全日本、簡単に逃げ切ることは難しい。そして終盤に入り、生き残りをかけた勝負がさらにヒートアップ。フィニッシュまで36kmほどを残して、メイン集団に残っている宇都宮ブリッツェン選手は増田のみになってしまっていた。阿部も足をつって遅れてしまう。
少数精鋭になってきた先頭集団からアタックをかけたのは小石祐馬選手(Team UKYO)だ。ツアー・オブ・ジャパンなどで海外選手の活躍が目立つTeam UKYOも粒ぞろい。小石選手も春先から目立つ動きをしていた一人だ。逃げる彼を増田を含む16名が追う形となった。
「アップダウンが激しいわりにはスピードが出るコースで、後半になると消耗してくる。後半どれだけ元気でいられるかが勝負。チーム力を発揮した展開に持ち込むのはなかなか難しい」(増田)
宇都宮ブリッツェンは増田のそばにアシストで宮崎を走らせ、後半に持ち込む予定でいたが宮崎は遅れている。他チームも1、2名を残す程度で、優勝候補の一角であったマトリックスパワータグの小林選手もレースを離れる厳しさ。だがKINAN Racing Teamは3名が残っていた。
残り16kmとなり、小石選手に後続が追いつき14名の集団となった。ラスト1周を知らせる鐘の音を山本大喜選手(KINAN Racing Team)が最初に聴き、いよいよ最終局面がやってきた。そこで本場ヨーロッパで長年鍛え上げた底力を見せつけたのが新城幸也選手だ。そこに同郷の新城雄大選手(KINAN Racing Team)が前を走るチームメイトの援護のために食らいついた。
ラスト3kmで新城幸也選手が山本選手に追いつき、新城雄大選手も負けじとペダルを踏み込むとフィニッシュラインが見えてきた。最後は新城幸也選手が史上初となる3度目の全日本制覇を達成。増田も粘りの走りを見せたが、13位。宇都宮ブリッツェンは26位の小野寺、27位の阿部と合計3名が完走した。
【レース後の監督・清水裕輔のコメント】
「いつも通りの自分たちのスタイルでやりつつ、今日は本当に勝ちたかったので悔しい。(阿部の逃げは)他のチームにダメージが与えられるように、貝原、及川、堀、小坂ら若い選手から順番を追って仕事をして、中盤から小野寺と阿部。そして最後は増田と宮崎で行こうとしていたが、その中で阿部が逃げてくれたのはチームにとってすごく良かった。いいメンバーといいタイミングで行ってくれたと思う。若手は伸びてきてる部分もあるが、足りない部分も沢山ある。チームとしては総合力がまだ足りない。今日はブリッツェンの日ではなかった。一番強かった選手が勝った。完敗ですね」
【レース後の増田成幸のコメント】
「チームとしてできることはやった。その上での結果なので、素直に受け止めている。今日は新城幸也選手が優勝したが、KINANも人数を最後まで残してきた。表彰台に乗った3人は心からおめでとうと言える、勝つべくして勝った選手だと思う。そういう全日本選手権になったことは良かったと思う。今日のレースはチームでしっかり反省して、これを今後に活かしていきたい。振り返ることでチームの糧として次のレースも頑張りたい。JCLのレースで2週間後にまた広島に戻ってくるが、宇都宮ではバンクリーグ、秋には3年ぶりのジャパンカップもありイベントが続く。秋になったら(今日のような酷暑ではなく)涼しいレースになると思うので、もう少し生き生きできるんじゃないかな」
1位 新城幸也(BAHRAIN VICTORIOUS)4:36.28
2位 新城雄大(KINAN Racing Team)+0:00
3位 山本大喜(KINAN Racing Team)+0:15
13位 増田成幸 +2:08
26位 小野寺玲 +7:21
27位 阿部嵩之 +7:35
DNF 宮崎泰史
DNF 堀孝明
DNF 貝原涼太
DNF 及川一総
DNF 小坂光
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