11時にスタートの号砲が鳴った。空には灰色が広がってきており、気温は下がってきたが雲行きは怪しくなってきていた。
前半仕掛けてきたのはチームブリヂストンサイクリングだ。松田祥位選手が単騎での逃げを決め、1周目を終えて後続に40秒ほどリードを保つ。メイン集団では地元チームのヴィクトワール広島勢が積極的に前に出る。宇都宮ブリッツェンは阿部、小坂らが集団前方に位置して、増田は中程を走る。
逃げていた松田選手は集団に戻ったが、ここからサバイバルレースの始まりだった。3周目に5名参加のTeam UKYOが全員で前方のコントロールを始めたかと思うと、ヨーロッパから全日本出場のために帰国した新城幸也(BAHRAIN VICTORIOUS)も5周目に動き出す。また、Jプロツアーで今季6勝と破竹の勢いを見せる小林海(マトリックスパワータグ)も反応し、どんどん集団が活性化していく。だが宇都宮ブリッツェンの小坂、及川は集団から遅れてリタイヤ。
勢いが出てきた集団の動きにチェックを入れるのは宮崎だ。宇都宮ブリッツェン加入1年目ながら5月のツアー・オブ・ジャパンで新人賞獲得(総合9位)、5月後半のツール・ド・熊野で落車によるリタイヤをしたが、「骨に以上はなかったので5日後くらいから練習をしていた。練習は若干ボリュームが落ちたが、走りが阻害されるような痛みはなかった」として初のエリートカテゴリでの出走を決めた。
レースも半分を過ぎるとメイン集団の人数もスタート時の半分程度になっていた。大きな動きが出たのは8周目だ。マトリックスパワータグの小森亮平選手、チームブリヂストンサイクリングの河野翔輝選手、そして宇都宮ブリッツェンから阿部の3名が集団からの抜け出しに成功。さらにCIEL BLEU KANOYAの白川幸希選手も合流して、4名の逃げ集団が形成された。一方で堀と貝原が6周でレースを終えている。
「昨年の全日本のようにチームで2番目、3番目の選手が残って集団スプリントになるシチュエーションになるなら僕も成績を残したい。一泡吹かせてやろう、みたいな選手をチェックしている」(阿部)
大会前にそう語っていた阿部だったが、まさにそんな展開が訪れた。後続とのタイム差は30秒〜1分30秒辺りで前後しながら、しばらくは4名による小旅行となった。しかし、後ろに控える優勝候補たちも黙っていなかった。海外チーム在籍のため単独参加の新城幸也選手がメイン集団へ揺さぶりをかけ、脚力のない選手たちがふるいに掛けられ次々と脱落していった。宮崎は足をつって11周目で集団から遅れてしまった。