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2022/05/20 レース

【レポート】5/20 三菱地所 presents ツアー・オブ・ジャパン 2022 2nd STAGE 富士山

三菱地所 presents ツアー・オブ・ジャパン 2022 第2ステージ 富士山
▼開催日 2022年5月20日(金)
▼スタート 富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町中日向694)

▼フィニッシュ 富士山須走口五合目(静岡県駿東郡小山町須走)
▼出場選手 増田成幸、阿部嵩之、小野寺玲、宮崎泰史 (中村魁斗は第1ステージでDNF)

▼コース概要
富士スピードウェイ西ゲート~東京五輪タイムトライアル周回コース13km×4周~小山町須走支所~ふじあざみライン
総距離:78.8km 獲得標高:2,602m 出走:70名(16チーム) 天気:曇り スタート地点の気温:22度 アクチュアルスタート時間:10時30分
▼レースレポート TOJ2日目にして最難関の富士山ステージ。富士スピードウェイをスタートしたら、TOKYO2020自転車タイムトライアルの周回コースを4周半、その後、全選手が恐れるふじあざみライン経由で、富士山須走口五合目へと向かう。ふじあざみラインは全長11.4㎞。普通の人が11㎞を自転車で走るものなかなかだが、ここは富士山。標高差1,160m、平均勾配10%、最大勾配22%をレーススピードで選手は駆け上がる。しかも前日120㎞近くを走ったあとに…だ。
 富士山はかろうじて見えるが、雲が重く垂れ込める中のスタート。早くも3㎞地点で渡邉歩選手(愛三工業レーシングチーム)、寺田吉騎選手(日本ナショナルチーム)によるファーストアタックがあり、山本元喜選手(キナンレーシングチーム)、安原大貴選手(マトリックスパワータグ)、久保田悠介選手(ヴィクトワール広島)、孫崎大樹選手(スパークルおおいた)、小村悠樹選手(チームユーラシア・iRCタイヤ)がジョインして、逃げは7人に。

 7人に宇都宮ブリッツェンの姿はないが、チームには阿部がいた。この日ほど「この男がいて良かった」と思ったことはないだろう。おそらくプロトン全体がそう思ったはずだ。

 今日の宇都宮ブリッツェンは、強いからこその葛藤があった。増田のステージ優勝と総合優勝を狙うのはもちろん、宮崎の山岳賞、新人賞ジャージも結果的にキープできたら御の字。そして、東京で小野寺のステージ優勝を狙うには、今日明日を何としても完走させなければならない。そうなると、今日仕事をするのは阿部しかいない。前半の4周回はTOKYO2020のTT周回コースであったが、阿部は先頭で個人TTをしているようであった。逃げとの差を2分強でキープしつつ、なんと60㎞以上、62人を独りで引き続けたのだ。除雪車のような低く力強いポジションで、「ここは誰にも引かせない。このステージは俺たちがもらうんだ」と、背中が語るようであった。

 残り2㎞でふじあざみラインに入るころ、集団では他チームの位置取り合戦が始まった。仕事を終えた阿部に代わり、小野寺が集団を引き始めたのも頼もしい。しかしここは勝負所。一気に集団はバラバラになり、逃げとの差も縮まり、わずか7人のクライマー集団に。

 そこからギアをかけたのが、総合1、2位につけるネイサン・アール選手(オーストラリア、チーム右京)、ベンジャミン・ダイボール選手(オーストラリア、チーム右京)の2人。この動きで後続は各自の一人旅となり、3番手以降は、トマ・ルバ選手(フランス、キナンレーシングチーム)、増田、山本大喜選手(キナンレーシングチーム)、宮崎、小石祐馬選手(チーム右京)、小林海選手(マトリックスパワータグ)と続く。さすが日本屈指のヒルクライマーは、日本人最高位で富士山に挑む。

 残り1.5㎞、今季破竹の勢いの小林選手が増田をかわす。前日、レースを掌握していたマトリックスであったが、それを結果に示すことができなかった。8番手から3人を抜いて上がってきた小林選手の意地と誇りをリスペクトしたい。

 地獄の上りをアウターギアで上ってネットをザワつかせたダイボール選手とアール選手。ゴール直前にある「最後の壁」を揃ってこなし、順当にワンツーフィニッシュ。増田は粘って(しかもまったく蛇行することなく)5番手。TOJの富士山ステージは未知で「ただ粘るだけ」と言っていた宮崎は、本人も驚きの7位につけて、新人賞ジャージをキープした。

 約2時間に渡って中継画面を飾った赤い列車は、日本のトップを走るチームとしての風格を感じさせた。出走70人のうち阿部の区間70位は、中継には映らないがその姿を想像いただけるだろう。「Always Evolving ~常に進化する~」 今日もその1つの進化を魅せた1日だったのではないだろうか。

【第2ステージ後の監督・清水裕輔のコメント】
チームとしては、できることを最大限発揮した結果。悔しいが、みんな良くやってくれた。増田は総合順位を1つ下げたが、明日以降できることは何か、正式なリザルトを見ながら、もう一度整理して、明日も取れるものをしっかりつかんで、レースを作っていきたい。

【第2ステージ後の増田成幸のコメント】
出走が4人だったが、序盤から阿部にコントロールをお願いし、逃げとの差を開けすぎないように上りまで行けた。阿部は本当に一人で引いた。一人でこれだけコントロールし切れるというのは、僕も思っていなかった。今日は阿部のお陰で最初もいい位置で上れた。上りに入って、僕と宮崎で勝負をしていきたかったが、そこは実力通り、チーム右京の2人に完敗だったと言わざるを得ない。悔しいが、実力で負けたので悔いはない。これから正式なリザルトを見るが、明日は総合成績のタイム差を意識し、チームとしては宮崎が新人賞ジャージをキープしたので、そこも考えながら戦いたい。相模原ステージは総合に関係のない選手もステージ優勝のチャンスがあるので、小野寺や阿部が狙えることも考えたい。

【第2ステージ後の宮崎泰史のコメント】
TOJでふじあざみラインを走るのは初めてだが、キツさはトレーニングのときとあまり変わらなかった。ただ、出力がいつもより3、40W低く、これが標高の高いレースなんだなと実感した。今日は山岳賞ジャージは(ゴールの地点のポイント配分が高いため)持っていかれるとは思っていたが、明日も狙っていけば取り返すこともできるかと思っている。このあとチームと話をするが、ワンチャンス狙えたら、狙っていきたいと思う。新人賞ジャージは2位と4分ほど差がついているので、そこまで気にせずしっかり走って、守れたらいいと思う。

【第2ステージ 区間賞 リザルト】
1位:ネイサン・アール(オーストラリア、チーム右京) 2:33:18
2位:ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、チーム右京) +0:00
3位:トマ・ルバ選手(フランス、キナンレーシングチーム) +0:55
5位:増田成幸 +2:04
7位:宮崎泰史 +3:29
37位:小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) +14:08
70位:阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +31:43
【第2ステージ終了後 個人総合時間賞 リザルト】
1位:ネイサン・アール(オーストラリア、チーム右京) 5:37:33
2位:ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、チーム右京) +0:07
3位:トマ・ルバ選手(フランス、キナンレーシングチーム) +1:36
4位:増田成幸 +2:41
7位:宮崎泰史 +4:57
25位:小野寺玲 +16:26
70位:阿部嵩之 +55:33

【第2ステージ終了後 団体総合時間賞 リザルト】
1位:チーム右京 16:58:12
2位:キナンレーシングチーム +9:22
3位:マトリックスパワータグ +16:02
4位:宇都宮ブリッツェン +18:35

【リーダージャージ】
個人総合時間賞 ネイサン・アール(オーストラリア、チーム右京)
ポイント賞 ネイサン・アール(オーストラリア、チーム右京)
山岳賞 ベンジャミン・ダイボール選手(オーストラリア、チーム右京)
新人賞 宮崎泰史(宇都宮ブリッツェン)