多くのチームが前日入りする中、宇都宮ブリッツェンは2日前の昼過ぎから現地に入って試走をし、前日は丁寧にコンディショニング調整。昨年個人総合優勝を果たした増田成幸をリーダーに、連覇を狙う士気を高めた。
快晴と観客の笑顔に見送られてレースがスタート。逃げがいくつか決まるが、集団との差が20秒前後しか開かず、ようやく逃げが固定されたのが4周目。織田聖選手(EFエデュケーション・NIPPO デヴェロップメントチーム)、山本元喜選手(キナンレーシングチーム)、石橋学選手(チーム右京)、西尾勇人選手(那須ブラーゼン)の4名の逃げが決まる。集団はマトリックスパワータグをメインに、宇都宮ブリッツェンも先頭に位置し、逃げとの差を最大でも1分程度でコントロールする。
山岳ポイントまでの上りには、このステージでのイベントの一環として、市民によるチョークペイントがアスファルトに施されている。自分の名前を見つけると選手はがぜんやる気が出るそうで、そのパワーのお陰か、上りのたびに集団がペースアップ。6周回目には集団は2/3ほどになるが、宇都宮ブリッツェンは、増田はもちろん、阿部嵩之、小野寺玲、宮崎泰史がしっかりと残る。
4人の逃げは7周目で吸収され、変わって飛び出したのが石上優大選手(EFエデュケーション・NIPPO デヴェロップメントチーム)、小石祐馬選手(チーム右京)。ほどなくしてこの2人はつかまるものの、これをきっかけに集団の動きが活性化され、各チームの有力選手だけが残る形に。宇都宮ブリッツェンは、それまで先頭ローテーションに加わっていた阿部が後退したが、集団20名に増田、小野寺、宮崎が残る。
さらにセレクションがかかったのが9周回目の上り。山本(元)選手の加速をきっかけに、増田、宮崎、小林海選手(マトリックスパワータグ)、ベンジャミン・ダイボール選手(オーストラリア、チーム右京)、ネイサン・アール選手(オーストラリア、チーム右京)の6人の先頭集団が形成され、ここに山本大喜選手(キナンレーシングチーム)が追いつく。つまり、ブリッツェン2名、キナン2名、右京2名の中に、マトリックスが小林選手の1名のみの形となった。小林は今季5戦4勝、しかもすべてのレースで表彰台に立つほどの絶好調で、前日の記者会見では、「いろんな勝ち方ができる強いチーム」とチーム力に自信を持っており、この不利な状況を嫌ってリズムを乱すような動きに。
10周目に差し掛かるころ、小林選手の思惑通り後ろが追いつこうとする中で、ダイボール選手が単独アタック。これに反応したのが宮崎。このTOJにセレクトされることを目標に掲げていた宮崎は、春先のレースから逃げやアタックつぶしなど、重要な箇所には必ずいるという働きを見せ、見事TOJ初出場を掴んだ。今季チーム加入のルーキーが、今日も値千金の動きを見せる。
宮崎が先行する中、集団で一度脚を休めた増田が、次の動きに反応。宮崎はつかまるが、ダイボール選手から18秒遅れでアール選手、30秒遅れで増田、トマ・ルバ選手(フランス、キナンレーシングチーム)が前を追う。
前が勝利を確信する中、これはステージレース。少しでもタイム差を縮めたい増田は必死でペダルを踏む。ルバ選手も思惑は同じで3位争いのゴールスプリントに。3位まではボーナスタイムがつくという分かれ目であったため、2人は自転車を投げ、目視では順位の判断ができないほどのゴールシーンとなったが、なんと0.004秒差で増田が3位に。トップとのタイム差は31秒であったが、ここから4秒マイナスのボーナスタイムを獲得した。
なお、トップは残り150mのところでダイボール選手が交わされ、同チームのアール選手が勝利を収めている。
残り2周回で数的有利を活かせなかったことが反省点ではあると増田は言うが、キャプテンが称賛したのが宮崎の走り。それは結果にも表れ、宮崎は山岳賞、新人賞2つのジャージをものにし、表彰式に登場した。中村は残念ながらDNFとなってしまったが、このステージに苦手意識を持っていた小野寺が11位でゴールしたことも評価したい。
明日のクイーンステージの富士山は、昨年増田が勝って総合優勝を決めた場所。レース前より、「ディフェンディングチャンピオンだから絶対勝たなければならないと思って、うまくいった試しはない。新たな気持ちで、チャレンジャーとして臨みたい」と言っていた増田だが、これで実際に肩の荷が降り、明日は体も気持ちも軽くして、あざみラインを駆け上がるに違いない。赤い山岳賞ジャージを着て走る宮崎にも注目だ。