今日は最後までチームの機能がすべてうまく働いていた。仕事をし続けた武山も、ちぎれかけていた花田も、最終周回の8名に残った。8名の内、KINAN Racing Teamが2名(孫崎大樹選手、ルバ・トマ選手)、マトリックスパワータグが1名(織田聖選手)、Sparkle Oita Racing Teamが1名(阿曽圭佑選手)、ヴィクトワール広島が1名(ベンジャミン・ダイボール選手)という中で、唯一3名を入れたのが宇都宮ブリッツェンだった。絶対に負けられない状況だとは言え、ロードレースでは、こうした複数名を入れているチームが後手を踏んでしまい、誰も表彰台に上れないという結果を何度も見てきている。
レース残り6km。ダイボール選手が8名を揺さぶり、花田が一度ちぎれるがほどなく復帰。残り3kmには、ルバ選手が飛び出し、武山がそれをチェック。残り2.5kmで、今度は武山自らがペースを上げ、8名がバラけて、また1つになったところでもう一度武山がアタック。
こうしてライバルたちが脚を使う中、最終局面を迎えても沢田は集団内にどっしりと構え、クレバーだった。沢田は、最もスプリント力があると思われる孫崎選手の後ろに入って残り200mに。そして慌てることなく残り50mで孫崎選手を交わして、首をやや縦に振りながら力強いスプリント。8名の中で最強だった沢田は、フィニッシュラインを通過後すぐに勝利を確信。左拳を突き上げ、雄叫びを上げて自身ロードレースでの初優勝を飾った。第一回新城ロードレースの初代王者。そして就任2年目の西村大輝監督にとって、ロードレース公式戦での初優勝となった。レース中継の勝利監督インタビューでは、目に光るものがあった。
前レポートとなるシマノ鈴鹿の際もお伝えしたが、沢田は今年、5月にインドネシアで開催されたMTBのアジア選手権で優勝してアジアチャンピオンに輝き、7月に富士見パノラマで開催されたMTBの全日本選手権でXCC、XCO共に日本チャンピオンとなっている。「男子エリート選手で唯一無二の三刀流」という肩書を持つ沢田だが、ロードレースでの優勝がなかったため、今日の優勝は悲願達成だ。この勢いで今年度シクロクロスの全日本チャンピオンを取り、近い将来ロードレースのチャンピオンにもなって、自転車競技三冠の筋書きを現実のものにしたい。
長くロードレースでの勝利がなかったチームであったが、勝利の形が見えてきて、それを実践できる選手たちは頼もしい。これもひとえに、変わらず応援してくださる関係者やファンの方々あってのこと。ありがとうございました。