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2024/09/08 レース

【レポート】Jプロツアー第13戦 第1回 新城ロードレース

【レポート】Jプロツアー第13戦 第1回 新城ロードレース

 

▼開催日

2024年9月8日(日)

 

▼スタート&フィニッシュ

桜淵県立自然公園(愛知県新城市庭野八名井田)

 

▼出場選手

谷 順成

沢田 時

武山晃輔

花田聖誠

本多晴飛

 

▼競技概要

愛知県新城市庭野、日吉、吉川、小畑、中宇利、富岡、黒田 (16km × 10周回=総距離160㎞)

出走:117名

スタート時間:10:00

▼レースレポート

 

愛知県の新城市は、これまでクリテリウムはおこなわれていたが、ロードレースは初開催。2026年のアジア競技大会でのロードレース開催地として仮決定しているため、その前哨戦レースとなる。多くのチームが7名以上で参戦する中、フォン・チュンカイを怪我で欠いた宇都宮ブリッツェンは、谷順成、花田聖誠、武山晃輔、沢田時、本多晴飛の日本人5名だけで出場した。コースはアジア競技大会で使用するそのものではないが、1箇所の山岳ポイントを含む1周16kmを10周する総距離160km。極端な勝負どころがあるコースではないだけに、チーム戦略が鍵となるレイアウトだ。

 

直近のシマノ鈴鹿ロードレースはチームがうまく機能し、沢田が2位。この形を後半戦にも維持できればと臨んだ一発目のレースだ。チームワークを揺るぎないものにしたい。

 

9月に入ったとはいえ、残暑は厳しく、10時スタート時も暑かったが、昼過ぎには気温35度にもなった。レースは1周目からアタックが緩むことはなく、選手の消耗は激しく、集団はどんどん小さくなって、本多も4周目にレースを降りた。残り4名となった宇都宮ブリッツェンだが、ほとんどのアタックにチームの誰かが反応し、常に前で展開する姿勢をキープしていた。

 

決め手となったのは5周回目。山岳ポイントからの下りを利用し、12名の逃げグループが形成される。ここに花田、武山、沢田が入った。他に複数メンバーを入れていたのはそれぞれ2名を入れていたKINAN Racing Teamと愛三工業レーシングチームだけであった。またその後は7周回目に5名が追いつき、17名の逃げに。12名に入れてなかったヴィクトワール広島から、ベンジャミン・ダイボール選手が自ら脚を使って追いついてきた形だ。

 

集団とのタイム差は30~40秒あたりで推移していたが、集団に残っているのが谷だけということを考えると、宇都宮ブリッツェンは逃げ切りたい。不安要素としては、花田はシーズン前半戦でDNFが多く、武山は最終局面で落車や暑さにやられてペースダウンということが最近はあった。また、シマノ鈴鹿のときは早がけで最後まくられて2位となった沢田が、今回どうやってスプリントをするのか。はたまたもっと早めに仕掛けて単独勝利を狙うのか。そんな心配もありつつも、宇都宮ブリッツェンのチームの勢いは変わらなかった。武山はすべての飛び出しに反応し、さらに自分からもアタックを仕掛けていった。花田は途中千切れそうな場面がありつつも、諦めずに食らいついていった。沢田は明らかに脚を温存している様子ではあったが、8周目で逃げが6名になった際も、武山と一緒にそこに入った。一方、集団のほうでも飛び出しがあったときは、そこに谷が入った。

今日は最後までチームの機能がすべてうまく働いていた。仕事をし続けた武山も、ちぎれかけていた花田も、最終周回の8名に残った。8名の内、KINAN Racing Teamが2名(孫崎大樹選手、ルバ・トマ選手)、マトリックスパワータグが1名(織田聖選手)、Sparkle Oita Racing Teamが1名(阿曽圭佑選手)、ヴィクトワール広島が1名(ベンジャミン・ダイボール選手)という中で、唯一3名を入れたのが宇都宮ブリッツェンだった。絶対に負けられない状況だとは言え、ロードレースでは、こうした複数名を入れているチームが後手を踏んでしまい、誰も表彰台に上れないという結果を何度も見てきている。

 

レース残り6km。ダイボール選手が8名を揺さぶり、花田が一度ちぎれるがほどなく復帰。残り3kmには、ルバ選手が飛び出し、武山がそれをチェック。残り2.5kmで、今度は武山自らがペースを上げ、8名がバラけて、また1つになったところでもう一度武山がアタック。

 

こうしてライバルたちが脚を使う中、最終局面を迎えても沢田は集団内にどっしりと構え、クレバーだった。沢田は、最もスプリント力があると思われる孫崎選手の後ろに入って残り200mに。そして慌てることなく残り50mで孫崎選手を交わして、首をやや縦に振りながら力強いスプリント。8名の中で最強だった沢田は、フィニッシュラインを通過後すぐに勝利を確信。左拳を突き上げ、雄叫びを上げて自身ロードレースでの初優勝を飾った。第一回新城ロードレースの初代王者。そして就任2年目の西村大輝監督にとって、ロードレース公式戦での初優勝となった。レース中継の勝利監督インタビューでは、目に光るものがあった。

 

前レポートとなるシマノ鈴鹿の際もお伝えしたが、沢田は今年、5月にインドネシアで開催されたMTBのアジア選手権で優勝してアジアチャンピオンに輝き、7月に富士見パノラマで開催されたMTBの全日本選手権でXCC、XCO共に日本チャンピオンとなっている。「男子エリート選手で唯一無二の三刀流」という肩書を持つ沢田だが、ロードレースでの優勝がなかったため、今日の優勝は悲願達成だ。この勢いで今年度シクロクロスの全日本チャンピオンを取り、近い将来ロードレースのチャンピオンにもなって、自転車競技三冠の筋書きを現実のものにしたい。

 

長くロードレースでの勝利がなかったチームであったが、勝利の形が見えてきて、それを実践できる選手たちは頼もしい。これもひとえに、変わらず応援してくださる関係者やファンの方々あってのこと。ありがとうございました。

【沢田時のレース後のコメント】

 

今日も常に前で展開していこうと話はしていた。結果的に勝ち逃げに3人乗れ、それは前のシマノ鈴鹿と同じ展開で、自分がスプリントだけに備えるというプランはチームで共有していた。最後、武山選手も花田選手も強くて、うまく動いてくれて、僕のスプリントを信じてくれて勝つことができた。最後は少し緊張したが形になって良かった。僕だけでは勝てなかったので、2人に感謝したい。ロードレースでの初めての優勝。ずっと目標だった。初開催のこの新城ロードレースで達成できたのは嬉しかった。表彰式を待つ間にも話していたが、コースもすごく良く、楽しいレースができた。

【監督・西村大輝のレース後のコメント】

 

チーム一丸となり、チームワークもしっかり取れており、その上で優勝という結果となり、嬉しい気持ちでいっぱいだ。あらかじめ決めておいたメンバーを前に入れようという話はしており、それがきちんと形となって勝ち取れた結果だと思う。フィニッシュの瞬間は中継映像を見ていたが、メカニックの山崎くんと「行け、行け、行け!」と叫んだ。優勝の瞬間は二人で雄叫びを上げた。(※涙で言葉をつまらせながら)これまで「優勝」というものがなかったので、「長かったな」とか「勝てて良かったな」とか、いろんな感情が湧いてくる。今後もJBCFの大切なレース、またUCIのレースも詰まってくるので、この勢いをそのまま、シーズンの終盤戦につなげていきたい。

▼リザルト

 

1位 沢田時(宇都宮ブリッツェン) 3h53’12”

2位 孫崎大樹(KINAN Racing Team)+0’00”

3位 阿曽圭佑(Sparkle Oita Racing Team) +0’00”

 

4位 花田聖誠(宇都宮ブリッツェン) +0’00”

8位 武山晃輔(宇都宮ブリッツェン) +0’08”

17位 谷順成(宇都宮ブリッツェン) +5’08”

DNF 本多晴飛(宇都宮ブリッツェン)

 

※全リザルトは下記URLをご参照ください。

https://jbcfroad.jp/wp-content/uploads/2024/07/